なんとも心象の悪いCOPになりました。予想通りといえば、少しは残念な思いが消えますが、誰もが納得する結論ではありません。国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)は11月24日、先進国から途上国に拠出する気候変動対策費を2035年までに少なくとも年3000億ドルに増やすことで合意しました。目標は1兆ドル。当初から無理とはわかっていましたが、出資する先進国側が妥協する姿勢は皆無でした。長年の課題である化石燃料の削減も進展しませんでした。
七転八倒は予想通り
毎年開催するCOPの最終日までもつれ、延長するのが恒例になったようです。COP29も最終日の22日を過ぎ、24日に閉幕しました。京都議定書、パリ協定など地球温暖化の防止に向けて大枠を固める議論する段階までの高揚感は消え、具体的な対策に必要な資金調達を巡って先進国と途上国の対立構図だけが浮き彫りになりました。
当初から難航は予想されていました。地球温暖化の元凶であるCO2を排出する米国や欧州連合(EU)、日本など世界の主要国・地域の首脳が欠席しています。目の前に立ちはだかる難問を解決しようとする姿勢はありません。失礼ながら、議長国は石油ガスの大産出国アゼルバイジャン。3年前からエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)と資源輸出国が議長国を務めた流れを考えれば、議長国の努力に敬意を表しますが、最終的な合意に期待はできませんでした。
COP29はファイナンスCOPと呼ばれていました。地球温暖化に必要な資金は国連の試算でも年間1兆ドルと言われ、その資金を調達する仕組みを考案するのがCOP29と期待されたからです。国連が試算した気候変動対策の費用は2030年までに5兆ドルから7兆ドルと言われています。2025年から2030年までの5年間、年間1兆ドル以上を目標に集めなければいけません。日本円で150兆円。ファイナンスCOPと呼ばれる所以ですが、多くの人は無理と考えていたはずです。
化石燃料の削減も進展せず
より深刻なのは化石燃料の削減が進展しませんでした。「およそ10年間で脱却を加速する」とした目標は石炭火力発電の廃止時期の明示も見送られました。会期中にはEUや産炭国のオーストラリアが石炭火力発電所の新設に反対する有志連合を立ち上げましたが、日本や米国は参加しませんでした。日本は脱炭素の切り札に原子力発電所の拡大を想定していましたが、東京電力の福島第1原発事故によって全国の原発稼働が立ち往生。
その遅れを補う形で石炭火力に頼っています。脱炭素を謳いながら、原発の再稼働の遅れを理由に石炭火力の削減を先送りする姿勢に批判が多く、日本の中途半端なカーボンニュートラルの政策は誇れるものではありません。
国連のグテーレス事務局長は2023年7月、地球は温暖化ではなく、沸騰化していると警告しました。直近のCOPを見ていると、警告は耳に届かず、気候変動対策を掲げながらも先進国と途上国の対立に乗じて脱CO2の加速を遠ざけているようにしかみえません。
美しい目標は瞬時に現れ、消えてしまっては困ります
地球温暖化、カーボンニュートラルと目標に立ち向かうCOPは歩みを止めるわけにはいきませんが、掲げる目標が美しいだけでは台無しです。信じられない色彩が織りなすオーロラは瞬時に現れ、消えてしまうそうです。そんな国際会議になって欲しくないです。
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