ESG・SDGsと企業経営

東急不動産 みずほ銀から自然保全の融資第1号に 環境重視の経営に弾み

 東急不動産が取り組む自然を活用した事業化に弾みがつきそうです。みずほ銀行とみずほリサーチ&テクノロジーズは地球環境を保全、あるは回復に取り組む企業に対する融資商品を開発し、第1号として東急不動産ホールディングスを選びました。東急不動産は大陽光や河川など再生可能エネルギーを利用した発電事業に力を入れており、地球環境を重視した経営を評価したようです。

みずほが評価し、融資

 みずほ銀行とみずほリサーチ&テクノロジーが扱う融資商品は、国連開発計画(UNDP)の助言を受けて評価手法を独自に開発しました。企業の取り組みを5段階で評価し、上位4段階の評価を得た企業に融資します。評価手法などは日本格付研究所から第三者意見書を取得して、中立性を確保しています。

 融資額の上限や資金の使い道は決めておらず、金利は通常の融資と同じ水準に設定します。融資期間は2年以上。融資する企業が決めた評価指標をみずほリサーチ&テクノロジーズが毎年評価し、公表します。融資された企業は、地球環境に対する取り組みをアピールできる仕掛けです。

 日本経済新聞によると、東急不動産の場合、東京・渋谷駅周辺やリゾート施設が対象です。CO2排出量や建物の緑化、森林保全面積などを指標に設定し、約120億円の融資を受けるそうです。

自然を利用したエネルギー事業も拡大

 東急不動産は再開発などで地域の保全、緑化などに力を入れる一方、2014年からは太陽光や風力発電など利用した再生可能エネルギー事業に進出しています。発電能力は合計130万キロワットを超えており、単純比較すれば東京電力の柏崎刈羽原発1基分に相当します。

 直近では、小規模な水力発電事業に本腰を入れます。河川などの水流の落差を利用して水車のようにタービンを回し、発電した電気を販売する事業です。通常のダムや火力発電、原子力発電と比較にならないほど小規模ですが、実は山地や川が多い日本の国土にとって最適な電源開発です。地方の過疎化と大都市の人口集中の2極構造が加速する日本にとって挑む価値がある”エネルギー革命”です。森とみずのちから(奈良県下市町)と提携して、最大出力1000キロワット以下の小規模な水力発電を開発する計画で、28年までに岐阜県高山市で稼働させ、東北や北関東でも増やすそうです。

不動産の新たな事業創出を期待

 小規模な水力発電は2030年までに500億円以上を投じ、既存の発電所の買収も加えて発電能力を3万キロワット程度まで増やす目標を掲げています。3万キロワットは一般家庭3万世帯以上の電力需要に相当します。集落ごとに小規模な水力発電装置を設けてネットワークを広げていけば、地方の市町村にとっては使い勝手が良いのではないでしょうか。

 小規模な水力発電所を建設するためには、地域の農水産業と連携して電力を利用する基盤整備が欠かせません。再生可能エネルギーの拡大とともに、地域の活性化に参画する形になり、地域の自然保護にも貢献できます。不動産会社として新たな事業創出として期待したいです。

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