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COP29 気候変動対策が資金争奪戦にすり替わる 討議は「コップの中の嵐」に

 国連の気候変動国際会議(COP29)が11月11日、アゼルバイジャンの首都バクーで開幕しました。案の定というか、残念というか。COP29のHPには「緑の国に向けて連帯を」と大きく掲げられていますが、早くも分裂し始めています。この3年間、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、そしてアゼルバイジャンと化石燃料の産出国が議長国を務めているせいか、CO2の排出量削減の具体策より途上国への資金拠出など制度設計に議論がよじれてきました。米大統領選のトランプ返り咲きもあって先進国内の対立も先鋭化しそうです。

ファイナンスCOPと呼ばれる

 COP29はファイナンスCOPと呼ばれているそうです。国連が試算した気候変動対策の費用は2030年までに5兆ドルから7兆ドルと言われています。運良く合意したとしても、2025年から2030年までの5年間、年間1兆ドル以上を目標に集めなければいけません。日本円で150兆円。ファイナンスCOPと呼ばれる所以ですが、先進国の担当者じゃなくても、「これはまとまらない」と心の声が囁くでしょう。

 これまでの会議でも気候変動対策を念頭に先進国が資金を拠出することが2009年に決まっています。目標額は年間1000億ドル。ざっと日本円で15兆円。2015年、地球温暖化に対する国際的な取り組みを決めた「パリ協定」では2025年までに資金目標を上積みすることも決めています。

2030年までに5兆ドル以上

 2015年ですから10年間あれば合意できるだろうという目算だったのでしょうが、2025年は来年。2024年のCOP29に基本合意にこぎつける必要があります。この9年間で決められなかったことをCOP29でまとめ上げるためには議長国にかなり頑張ってもらわなければいけません。

 ところが、アゼルバイジャンの議長国としての手腕を疑問する声が広がっています。まず3年連続して石油・ガスの産出国で脱化石燃料を議論するのが適当なのか。政治情勢もあります。過去にアルメニアと係争地を巡って激しく対立しているうえ、アリエフ大統領は2003年に大統領に当選して以来現在は5期目ですが、大統領職は父親の後を継いでおり、欧米では独裁的な長期政権と批判する見方が多いのです。

 期待通り?アリエフ大統領は11月12日に欧米メディアや欧米諸国を「偽善」「ダブルスタンダード」など非難しました。朝日新聞によると、「私たちは、組織的な誹謗(ひぼう)中傷と脅迫のキャンペーンの標的になった」と語ったほか、脱化石燃料を唱える欧州はアゼルバイジャンからガスを購入しており、その姿勢をダブルスタンダードと批判しました。

議長国の手腕にも疑問

 巨額資金の拠出をめぐって先進国、途上国が対立しているなか、議長国の大統領が火に油を注ぐかのように欧米を強く批判すれば、COP29の討議はどんな展開に進むのか。独裁的な大統領として知られていますから、参加国の多くは驚きはしないでしょうが、「ファイナンスCOP」として成果を上げられるのか。

 COPはすでに捩れています。昨年のCOP28の議長国UAEは開幕前日に15カ国と石油・ガスの取引について協議しました。国際会議に石油ガスを消費する国々が多く参加するのですから、商談会を開くのは当然と考えたのでしょうか。気候変動を討議するはずが、ビジネスを巡って討議する位置付けになったのかもしれません。

 国連のグテーレス事務局長は2023年7月、地球は温暖化ではなく、沸騰化していると警告しました。直近のCOPを見ていると、警告は耳に届かず、気候変動対策を掲げながらも先進国と途上国の対立に乗じて脱CO2の加速を遠ざけているようにしかみえません。

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