かなり衝撃でした。米国の海洋大気局の調査によると、2021年に北極海の南にあるベーリング海で約100億匹のズワイガニが死滅したそうです。原因は海洋熱波と地球温暖化の影響でベーリング海が亜寒帯の域になってしまうという本来ならあり得ない気候変動に見舞われていることです。当然、海の中の生態系を中心に大きく変わってしまいます。
ベーリング海は世界でも最も豊かな漁業資源があると言われており、北海道で育った私にはカニやエビなどが無尽蔵に生まれ続ける海と認識していました。地球温暖化、気候変動は1980年代から指摘され、対応策が議論されてきましたが、台風・ハリケーン、豪雨など異常気象に世界各地が襲われています。「まもなくカニが食えなくなるかも」。改めて地球温暖化の衝撃を痛打された思いです。
ズワイガニを1杯2000円で換算してみたら
ズワイガニが大量に死滅した背景は、米国の海洋大気局によると2018、19年に海洋熱波がベーリング海を襲った結果、ズワイガニの新陳代謝が通常よりも高まり、代謝に必要なカロリー消費を賄うだけのエサが存在しなかったため、餓死に追い込まれたそうです。しかも、海水温が上昇したため、本来なら南方にいるマダラが北上してしまい、生き残ったズワイガニを餌として食べたそうです。
誠に杜撰な話ですが、ズワイガニ100億匹の経済的な損失を試算してみました。ズワイガニの市場価値は大きさや品質などで千差万別ですが、仮に一ぱい2000円程度と想定すると、100億匹なら20兆円に相当します。日本の水産業は年間1兆円程度ですから、20年分に相当する金額が損失となって消えます。
函館の名産はイカからブリへ
ズワイガニの消滅は一例に過ぎません。すでに日本の周辺海域では魚種の変更が始まっています。例えば函館。イカの代名詞と呼ばれ、夏まつりに「イカ踊り」があるほどですが、漁獲量は10年前に比べて10分の1程度に減少しています。その代わりにブリが大漁で、函館の名産はイカからブリへ代替わりするそうです。
周辺海域の魚種の変化は全国各地で起こっています。今年は戻っていますが、根室のさんまも大不漁が続きました。サケなど大好物の魚が高騰しています。シシャモはもう漁獲量がキロ単位まで落ち込んでいると聞き、もう少し経てば姿を見るのも難しくなるのでしょう。同様な現象は本州、九州でも起こっています。
漁獲量の急減や魚種の変化は、世界的に進んでいる海水温の上昇です。日本周辺は過去30年の平均値を7月時点で比較すると、2~4度も上昇しているそうです。日本の水産業全体の影響はどのくらいの金額になるのでしょうか。「ズワイガニが食べられない」なんて嘆いている場合ではないです。
◆ 写真はタラバガニです。ズワイより価格はかなり高い。
コメント