通信販売の大手、ジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)が北九州市を拠点とする航空会社、スターフライヤーに出資しました。航空機内の販売やエンターテインメント、旅行商品などを拡充する狙いです。ジャパネットの創業者、高田明さんは本業の通販以外でもBS放送への進出、JリーグのV・ファーレン長崎の経営再建などに取り組み、地元の長崎県はじめ九州地域を盛り立てる事業展開に挑んでいます。スターフライヤーとの資本提携をてこに海外も視野にいれた総合サービス会社への飛躍を考えているはずです。ふるさとに腰を据えたまま、世界をどんどん広げる地方創生モデルとして注目していきたいです。
地域の企業と提携して、新たな挑戦へ
ジャパネットは2022年8月26日、投資ファンドが保有する新株予約権の一部を行使してスターフライヤーの議決権14・2%を取得したと発表しました。スターフライヤーの筆頭株主はANAホールディングスで、議決権は17%超。ジャパネットはスターフライヤーの国内線とともにANAとの接点を深め、今後の業務拡大の可能性も広げました。
BS放送局にも進出
発表文をみても、「航空輸送事業の枠 を超えた領域において「新たな顧客体験価値(CX)」を提供するビジネスモデルへの進化」を強調しています。ジャパネットはすでに第一種旅行業を取得しており、クルーズ旅行商品を販売しています。通販に続き、スポーツ・地方創生を新事業の柱に据えており、今回のスターフライヤーとの資本提携で陸と海に続く空のピースを埋めることに成功しました。陸海空を網羅する宇宙についても、BS放送局「BS Japanext」を開局して独自の動画コンテンツを制作し、物体を売るだけのビジネスから抜け出しています。
地方出身のサービス企業が全国展開する例はあまたあります。直近の例として北海道出身の企業をみても、家具のニトリ、ドラッグストアのツルハ、ホームセンターのDCMホーマックなどがすぐに浮かびます。いずれも広い北海道で得た流通ノウハウを生かて地域戦略を進め、そのブランドを全国に定着させ、企業買収や提携などで業界トップへ躍り出ていきます。
ジャパネットがユニークなのは、創業者の高田明さんの発想です。ジャパネットを家族へ継承して引退した後、地元長崎県を中心に地域起こしをキーワードに様々な活動に参加し、時には再建に努力します。苦境に陥っていたファーレン長崎をJ1に昇格させるとともに、三菱重工業長崎造船所の工場跡地をクラブの本拠地として再開発しています。通販業界などの枠に縛られずに新しい事業モデルを構築する発想に立って新規分野へ進出し、再生を成功させます。地域にとって雇用も含めて大きな貢献と映るのは間違いありません。
北海道の例に戻ると、スターフライヤーとの資本提携はニトリが北海道を拠点とする航空会社AIRDOに資本参加するようなものです。アイデアと決断力に長けたさすがの似鳥昭雄さんもここまで踏み込むかどうか。
地域から離れずに世界へ
しかも、常に視線は長崎、そして九州から離れず、地域貢献をしながらジャパネット本体の事業の枠を広げるチャンスに変えていく。サービス業は顧客からの信頼が命です。いくら数多くの商品を販売しても、アマゾンはじめ競合他社との価格競争は終わりません。「地元に貢献しているから信頼できる」といった企業に対する愛着が広がっていけば、安さだけを競う消耗戦に追い込まれる心配はありません。
スターフライヤーとの資本提携は、通販から始まったサービス事業の枠をぐっと広げます。輸送機関を保有することで、ジャパネットだけの独自配送体系を構築できるうえ、宅急便会社との関係強化も可能になります。スターフライヤーにとっても、機内販売だけでなく貨物輸送などの拡充を期待できます。しかも、航空路線は国際旅客の可能性にも広がります。かつては韓国便などを運行しています。ジャパネットはスポーツなどイベントによるチャーター便の拡大を計画していますが、九州はアジアと近く、とりわけ福岡は大人気の都市ですから国際チャーター便が運行する日もそう遠くないでしょう。
ジャパネットが持つ全国からの集客力と情報発信力を考えたら、通販、旅行、スポーツなどイベントといった多種多様な事業を一体運営し、収益を上げるモデルは想像できます。成功するかどうかは別の話ですが・・・。
地域の企業再建を通じて可能性を広げ、新しい起業を呼び起こす。地方創生モデルの理想です。ジャパネットによるスターフライヤーの資本提携は、それ自体が次の手は何かという期待感が膨らむエンターテインメントかもしれません。
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