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パリ・シャンゼリゼは緑増やし、人が回帰する街に 神宮外苑前は緑の回廊から高層ビルの街へ

 パリのシャンゼリゼ大通りが様変わりします。凱旋門からコンコルド広場までの1880メートルの街区は世界で最も美しいとフランス人が自慢する世界の観光名所です。しかし、現在は観光客と車で溢れ、パリ市民には遠い存在になってしまいました。パリ市は市民が再び気軽に立ち寄る空間に戻すため、車線を半減して車の通行量を減らす一方、歩道、街路樹を増やすそうです。「あれっ!」。東京都民なら驚きますよね。東京・青山の明治神宮外苑前の再開発計画と真逆の発想です。

車線は半減、歩道や街路樹は増加

 パリ市が発表した計画によると、シャンゼリゼ大通りの現在の風景は大きく変わります。自動車が走る道路は4車線から2車線へ半減し、エトワール広場の自動車用スペースも縮小。シャンゼリゼ周辺の交通量そのものを大幅に抑制します。代わりに市民や観光客が利用する歩道は広げ、テラス席やベンチを増設します。街を歩き回るだけでなく、友人や家族らと語り合い、憩う空間を創り、車中心の街から人が主人公の街へ生まれ変わるのです。

 街路樹も新たに400本を植樹します。「木のトンネル」と呼ぶ緑の空間を創出し、おいしい空気も味わえるようにするそうです。アイススケート場、簡易プール場の設置も計画されています。2030年までに日本円で350億円を超える金額を投じる計画ですから、シャンゼリゼは街区丸ごと変わるのでしょうね。

大通りは車と観光客が溢れている

 シャンゼリぜ大通りは欧州出張した際に立ち寄ったことがあります。凱旋門やエトワール広場など映画やテレビでしか見たことがない景色に酔ったせいか、道路を埋め尽くす自動車の波に飲み込まれそうになった苦い思い出があります。通りに並ぶお店は高級ブランドショップばかりで、観光客が列になります。さすが世界的な観光名所と感心していたら、一緒にしたフランス人は「シャンゼリゼを一度、見たからもう十分でしょ」と冷めた雰囲気で次の目的地に向かうのでした。

街を修正する勇気が羨ましい

 実際、シャンゼリゼ通りは1日、10万人が通行し、このうち70%以上が観光客、20%以上が街区で働く人が占めます。家賃が高いので、住んでいる人は少ないそうです。住民が消えた街は、昼間にどんなに混雑していても深夜になればゴーストタウンに。治安が心配です。「オー、シャンゼリゼ」と歌って歩き回るわけにはいかないでしょう。

 羨ましいのは、パリ市が観光名所で賑わうシャンゼリゼ大通りの課題を放置せず、市民が回帰する街に改造しようとしていることです。日本の観光地は海外からの観光客が多数訪れ、地元の住民の生活に支障をきたすオーバーツーリズムが問題になっていますが、街を住民のために改造する発想はそう見当たりません。日本経済が沈滞し、海外からの観光マネーに期待せざるを得ないこともあるでしょう。

神宮外苑前はシャゼリゼと逆行

 残念なのは、パリがシャンゼリゼ大通りで回帰を目指す街がすでに目の前にあるのに、あえて破壊する再開発計画が進んでいることです。東京・青山の明治神宮外苑前はその典型例ではないでしょうか。素敵な銀杏の並木道、広々とした空間に小洒落たレストランが並び、家族や友人らが連れ立って歩き回る空間がすでに完成しています。毎年秋、真っ黄色に染まった銀杏の落ち葉を踏んで歩く時はいつも感動します。「今日、外苑に来てよかった」。

 現在は三井不動産などが大規模な再開発計画が進めています。樹々などの量は増えると説明しますが、高層ビルが立ち並び、これまで感動した風景は消えてしまいます。数字上の辻褄合わせで議論しても仕方がないのです。街は人が住み、暮らす空間です。何が大事かをもう一度、考え直す勇気はどこにもないのでしょうか。

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