COP27は11月20日、気候変動の被害を受けた途上国を支援する基金を設立することに合意し、閉幕しました。欧米や日本など先進国が排出した温暖化ガスの増加に伴い、発展途上国は気温や海面の上昇などで大きな被害を受けています。島嶼国などが30年以上も前から補償を求めてきました。
先進国も気候変動対策などの支援に積極的ですが、金額的な補償については「責任」を認めることになるため、否定的な姿勢を貫いてきました。CCPIが公表した気候変動ランキングを参考にしながら、先進国と発展途上国の対立構図、今後の制度の行方をみてみます。
ランキングから先進国と発展途上国の対立を見る
COP27で合意した基金設立は、これまで被った「損失と被害(Loss &Damage)」を支援する制度です。小島嶼開発途上国と呼ばれる38カ国を中心に構成する「小島嶼国連合」が先進国などに求めていたものです。この連合の主な参加国はキリバス,サモア,ソロモン諸島,ツバル,トンガ,ナウル,バヌアツ,パプアニューギニア,パラオ,フィジー,マーシャル諸島,ミクロネシア連邦、アフリカでもカーボヴェルデ,ギニアビサウ,コモロ,サントメ・プリンシペ,セーシェル,モーリシャスなど。農水産業、観光業が経済の主軸を占め、海外からの経済援助に頼る国がほとんど。
太平洋やアフリカの島嶼国は深刻な状況
青い地球が熱くなっているのは否定できません。IPCC(気候変動政府間パネル)が示すデータを見るまでもなく、地球の気候は大きく変動。この結果、気温や海面の上昇などで世界各地はスーパー台風や猛烈な嵐や大雨に襲われ、北極やアルプスの氷河を溶かしています。
被害規模も予想を超えるスケールに広がっています。パキスタンが国土の3分の1が大洪水に見舞われた被害は誰もが言葉を失ったはず。日本でも上陸する台風が年々大型化し、洪水や土砂崩れなど被害の規模が拡大しています。すでに南太平洋ではキリバスなどの島国は海面上昇により街が侵食され、農水産業に頼る生活基盤が崩れる恐れが生まれています。
地球環境は計り知れない時間軸で氷河期などの気候変動を繰り返しています。短期的にみてはいけないといわれますが、発展途上国がここまで大きな災害に直面すれば、先進国が支援するしかありません。
もっとも、先進国としては通常の経済援助は続けるが、被害救済を目的にした基金制度は反対していました。合意した背景にはCOP27開催国で議長を務めるエジプトが、パキスタンなど世界的な大災害で批判が集まっている先進国に対し、干ばつなどで苦しむアフリカを代表する形で合意に持ち込んだからです。
主要排出国は「中位」「低い」「非常に低い」に
基金の制度は来年のCOP28までに具体化する予定で、基金拠出国は先進国と定義していないため、中国など温暖化ガスを大量に排出している国も参加を求められる可能性があります。CCPIの気候変動ランキングを参考に今後の行方を推察してみます。
温暖化ガスの90%以上を排出する59カ国+EUで構成するランキングは「非常に高い」「高い」「中位」「低い」「非常に低い」の5グループに分類されていますが、50位の日本も属している「非常に低い」グループの14カ国の顔ぶれを次のとおりです。50位の日本のすぐ下に中国、米国が続き、オーストラリア、マレーシア、台湾、カナダ、ロシア、サウジアラビアが連なり、最下位の63位はイラン。
日本を除けば、いずれも資源大国で経済規模も世界で上位グループ。中国は太陽光発電などの導入実績で世界1位ですが、温暖化ガスの排出量は大きく、下位グループから抜け出せません。
これに対し欧州勢は日本や米国、中国などと距離を置く上位につけています。太陽光などを拡大しているドイツや原子力を主軸にするフランスなど欧州各国は「高い」「中位」に入っていることもあって、EUは19位に付けています。
もっとも、ランキングの対象にも選ばれていない小島嶼国連合に参加する国からみれば、上位も中位も下位も関係ないでしょう。CCPIのランキングは温暖化ガスの絶対値を基準にせず、削減量が前回調査と比べて減っているかどうかなど相対的に評価しています。「損害と被害」の視点に立てば、今が「高い」「中位」にランキングされているからといって、自国に被害を与えている温暖化ガスを大量に排出していた国々の過去実績を見逃すわけにはいきません。
先進国の間でも削減努力などで思惑が衝突?
制度設計の行方もそう簡単ではないでしょう。気候変動地対策を早くから実践している欧州勢に対し、日本や米国などは出遅れ気味。中国も太陽光発電や電気自動車の普及に積極的とはいえ、日本を下回るランキングが物語るように温暖化ガスの排出削減はさらに求められます。インドは8位につけていますが、石炭火力の比率が高くCO2の排出量では頭抜けています。どの国がどの程度の負担をするのか。果たして決められるのでしょうか。
ランキングから基金の交渉難航が浮き彫りに
CCPIの気候変動ランキングを眺めているだけでも、COP28に向けた基金設立の制度設計が難航しそうな予感がします。
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