ESGやSDGsを巡る投資の単位が半端ないです。世界のESG投資は35兆ドル、日本円で4900兆円にのぼるといわれています。あまりの金額の大きさ、しかもさまざまな投資、金融商品を含めているので実態が見えません。直近の例を日本のケースで見ると、経団連が推奨する「インパクト指標」を使った投資の運用高だけをみても1兆3000億円余りと試算されています。この規模は前年の2・5倍だそうです。投資拡大はまだ序の口。世界最大の投資・運用会社ブラックロックが拡大戦略を加速しており、世界の投資の舞台で主役を演じる日は近いでしょう。
脱炭素支援で2兆円集める
直近の注目ニュースでみると、カナダのブルックフィールド・アセット・マネジメントが150億ドル(1ドル140円換算で2兆1000億円)の巨大ファンドを設立しました。同ファンドの発表によると、名称はグローバル・トランジッション・ファンド。「ネット・ゼロ・カーボンエコノミー」を目指しており、100以上の機関投資家が募集に応じました。CO2の排出量が多い鉄鋼など素材産業や石炭火力発電所を対象に脱炭素を支援する事業に資金を供給する狙いです。
同ファンドの共同代表はイングランド銀行の元総裁を務めたマーク・カーニーさん。カナダ中央銀行の総裁を務めたカナダ人でありながら、英国の中央銀行であるイングランド銀行総裁に就任して話題とその手腕が大いに注目を浴びました。金融業界が気候変動問題にどう関わるのかに取り組んでおり、ブルックフィールドの投資・運用を通じて実効性の高い脱炭素支援を具体化したいようです。
しかし、脱炭素の掛け声は高いものの、投資・運用先として高い評価を受けているかどうかは疑問です。ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格が高騰して資源開発会社の株式投資が好成績を挙げる一方、脱炭素を実現して事業収益につなげるまでには相当な時間がかかります。結局は脱炭素を名目に投資した運用効率の成績は他と見劣りしてしまいます。
関連ビジネスの高まりから「グリーンバブル」とも
脱炭素を名目に世界中から資金が集まります。機関投資家のみならず一般投資家の関心も高まるばかりです。巨額の資金は集める人気の高さから、ESGやSDGsの評価を高めるビジネスも雨後の筍のように増え、関連ビジネスは「グリーンバブル」と呼ばれる始末です。また、環境、脱炭素を名目に事業展開したり資金を集めたりして見せかけ上、企業評価を高める「グリーンウオッシュ」と批判される動きも広がっています。
脱炭素、ネット・ゼロ・カーボン、あるいはカーボンニュートラルなど様々な言葉に姿を変え、投資資金が集まり運用されています。「絶対に値上がりしますよ」と耳打ちされて購入、融資を誘う不動産投資とどう違うのでしょうか。「お金に色はない」と言われますが、個人的な経験からすると「お金には色があります」。それが金色なのか緑色なのかはわかりません。グリーンウオッシュしても、消えない大事なものを考えていきます。
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