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エフピコ Eco*Ten 8・1点 プラスチック容器は生き残るか 、構想力で過去と未来を切り拓く

  エフピコの社名を知らなくても、その製品に触れたことがない人は居ないはず。スーパーなど生鮮品を販売する棚の前に立ってみてください。目の前にはプラスッチ製容器に収められた生肉、鮮魚、野菜がずらり。素材の新鮮さを保ちながら、搬送や取り扱いで傷がつかないよう守られています。それがエフピコ。食品トレーのシェア3割を握るナンバーワンメーカーです。

 プラスチック製の食品トレーは日本の流通に革命を起こしました。生産者でプラスチック製の容器やラップに包装された生鮮品はトラックなどでスーパー、コンビニ、八百屋さんの店頭へ。輸送途中に汚れや衝突などでキズものになれば、ひと目でわかります。消費者が店先でどれを選ぶか手にとっても、傷めることがほとんどありません。新鮮さや清潔さに敏感な日本の消費者にとって安心して購入できるスタイルです。生産者、トラックや小売りなど流通業者、消費者にとって「三方よし」。プラスッチ製容器を使った流通が一気に普及したのは当然なのでしょう。

 海外旅行した時にマーケットを覗いてみてください。生肉、野菜や果物など生鮮品は店頭にそのまま並んでいます。すぐに手が伸びてしまいそうですが、どれにしようかと手にとって選ぶのはちょっとマナー違反。汚したり傷めたりするからです。手に取るとおいしさが直に伝わるので、容器に守られた日本方式よりも私は好きですが、外気にさらさられたままでは虫やゴミがつきやすい。容器包装に慣れている日本の消費者なら購入をためらうかもしれません。

 プラスチック製容器は海外でも利用が増えており、日本独特の流通方式というわけではありません。ただ、日本だからこそ需要が生まれ、製品開発やリサイクルなど関連技術の進歩を促したともいえます。

 しかし、プラスチック製品を取り巻く環境は逆風が吹き続けています。海や川の環境を汚染する元凶のひとつとしてプラスチック製容器が矢面に立っています。レジ袋を思い出してください。スーパーなどで買い物をすれば、ただ同然で利用したプラスチック製のビニールバッグが有料に切り替わりました。レジ袋を有料にして使用量を削減するなら、容器など他の用途でも多くあるだろう。誰でも考えつきます。お皿、ストロー、フォーク、スプーンなど食器の素材を紙製や木製に切り替えるカフェやレストランが絶えないのも当然でしょう。

 エフピコは猛烈な逆風下でどう活路を開こうとしているのでしょうか。地球環境に反すると思われがちな製品を主体に事業内容をどう変革し、企業の永続性を堅持していくのか。

 エフピコの未来は、プラスチック製容器の未来と重なります。企業自身の未来図を描いているのか。中期経営計画を参考にEco*Tenの視線で解析してみました。

 直近のエフピコの経営状況をみてみます。10月末に公表した2023年3月期第2四半期(4−9月)は売上高が前年同期比5・3%増の1025億円と過去最高を記録しましたが、営業利益は29%減の60億円、経常利益は28%減の64億円と減益となりました。コロナ禍に伸びた内食需要の反動で生鮮品の出荷が減少したほか、原材料の高騰が直撃したそうです。

 2023年3月期の通期予想は増収増益を見込んでいます。売上高は8・3%増の2120億円、営業利益は3・2%増の164億円、経常利益は1・8%増の170億円と想定します。プラスチック製品に対する風当たりが強いとはいえ、主力の容器は食品流通のインフラの一つとして支えているだけに、売上高は増収傾向を維持しており、利益も多少のばらつきはありますが、右肩上がりを守っています。

Eco*Ten=5項目各2点の合計10点満点

①透視する力;近未来をどう捉え、どのような対応が求められ、実行していかなければいけないか。見透す能力を評価します=2点

 エフピコの強さは、プラスチック製品に対する環境を見透し、自ら先手、先手を打ってきたことです。1962年、広島県福山市で紙加工から創業し、成型技術を活かしてプラスチック製容器へ業容を広げてきましたが、事業拡大にだけ目を奪われず社会の視線を見逃さなかったことがシェアトップの道を切り拓きました。

 エフピコ方式と呼ばれるリサイクルを知っていますか。1990年にエフピコが世界で初めて着手した方式で、消費者、スーパーなど小売店、流通業者を巻き込んだ食品トレーの回収、再生システムです。英国の環境雑誌がエフピコ方式とし て紹介したので、その呼び名になったそうです。

 皆さんも経験しているはずです。スーパーや公共施設のコーナーに配置された収納庫に、家に溜まったプラスチック容器を放り込むと、リサイクルされる仕組みです。食器トレー循環の輪といってよいでしょう。毎回、なんか良い行いをした気がするから不思議です。

 この方式を考案するきっかけは米国ハンバーガーチェーンの米マクドナルドの株主総会だったそうです。1980年代にエフピコの役員がマクドナルドの株主総会に参加した際、参加者からハンバーガーを収めた発泡トレーが批判されました。

 当時の発泡トレーの生産には大量のフロンガスを使用されたのですが、フロンガスは地球環境を破壊するオゾンホールを発生させるとして問題視されていました。マクドナルドはフロンガスの使用を削減したものの、発泡トレーそのものがゴミとなっているとの声が高まったのです。

 日本もそう遠からず発泡トレーなど簡易容器の処理・廃棄は問題になるだろう。40年も前にこう看過したことが今のエフピコを創り上げたといって良いと思います。

②構想する力;これから直面する状況を整理整頓して描き直し、対応できる計画を打ち立てる能力を評価します=1・5点

 問題意識を持つまでは、誰でもできます。近い将来かならず目の前に立ちはだかるであろう壁をどう打ち破り、乗り越えるか。見逃せないのはエフピコ方式と呼ばれるリサイクルの輪を構築するとともに、消費者、スーパー、流通業者と一緒にリサイクルの重要性を共有した点です。主力製品である発泡プラスチック製の容器が将来、企業成長の足かせになると予測し、消費者を巻き込むリサイクルの座組みを構想したのは秀逸です。

 リサイクルの設計図が描けたとしても、使用した後の容器を回収場所まで持ち込んでくれる消費者の理解がなければ、文字通りに絵に描いた餅で終わるからです。

=次回に続きます。

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