久しぶりに面白いニュース記事を見つけました。米国のマイクロソフトが核融合発電の米スタートアップ企業から電力を購入する契約を結んだそうです。地上で太陽を創造することに等しいといわれる核融合。地球温暖化を招くCO2を排出せずに膨大な電力を生み出す究極のエネルギーです。日本はじめ世界で研究開発しているにもかかわらず、実用化の見通しが立っていません。それが2028年から電力供給するそうです。売電契約が交わされるのは世界で初めて。夢のよう。
2028年から発電
ヘリオンが研究開発する核融合発電をざっと見てみます。重水素とヘリウムを使ってプラズマ化し、発電所の2つの加速器で時速約160万キロメートルにまで加速、核融合を実現します。その際に発生するエネルギーを「ファラデーの法則」に従って電力を生み出すそうです。ファラデーの法則は磁石とコイルを動かすと電流が発生する原理です。発電所内に同様の考えに基づいた装置が設置されるのでしょう。
ファラデーの法則を利用した新たな核融合
核融合はこれまで2つの方式が有名です。日本など参加する多国籍プロジェクトで進めるトカマク方式。それから米国などが研究するレーザーを使った方式。ヘリオンの磁場変動を利用した方式は、核融合反応で発生する中性子も無く、安全で設備の仕組みも単純化できるため、発電炉も小型化でき、建設費も抑制できると説明しています。核融合といえば、巨大な施設を建設して複雑な機器に包まれるトカマク方式のイメージでしたから、再び夢のような発電所です。
マイクロソフトはCO2ゼロを目指す
一方、マイクロソフトは30年までに調達電力をすべて「温暖化ガス排出ゼロ」とする方針。核融合発電による電力購入もその一環です。アップルなど米国のIT企業はCO2を排出しない再生可能エネルギーによる電力使用を加速しており、米国で広まっている潮流です。
今回のニュースの注目点はスタートアップ企業によるアイデアにマイクロソフトが電力購入契約にまで至ることです。核融合の発想もそうですが、ユニークなアイデアを評価して率先して決断する経営姿勢が素晴らしい。ヘリオンの核融合が失敗すればペナルティによる課金が発生するそうですが、マイクロソフトのような世界企業がまだ成否が見えない研究開発の事業化に手を差し伸べる米国企業の経営姿勢が素晴らしい。
日本は国家プロジェクトに視線
日本の場合、核融合といえば国家プロジェクトに直結します。NTTなど日本を代表する企業の視線は、巨大プロジェクトに集まりがち。スタートアップ企業が事業化に取り組んでも、実現するまで成否が明確になるまで静観するのではないでしょうか。
もちろん、日本政府が革新的な原子力発電所の研究開発に予算をつけて後押ししているのは知っています。しかし、いずれも過去に何度も浮上した研究炉がほとんど、二番煎じの印象は拭えません。
プラズマを覗き込む蛮勇を持って!
核融合は地球上に太陽を創造する発想です。原子と原子が衝突して生まれるプラズマの中を覗き込む勇気はありませんが、そのぐらいの蛮勇を持ってスタートアップの核融合などの原発プロジェクトに巨額資金を投じて欲しいです。このままでは日本の原発プロジェクトはいつまで経っても、夢のまま、幻のまま。