地球環境

炭素税見送りの代償は大きい 日本のエネ改革も見送り、エネ安保も見送り

 政府・与党は2023年度の税制改正で、炭素税の導入を見送りました。残念ながら予想された結果です。炭素税は地球温暖化の主因とされるCO2の排出抑制に直接的な効果を与える税制として欧米ではすでに導入されている国が相次ぎ、今後も増える続けるでしょう。しかし、日本は早くから経団連が企業経営に重い負担を招くとして消極的な姿勢をみせ、岸田政権も高騰するガソリン価格の抑制に懸命で、企業や国民にさらなる負担を強いる炭素税を導入する決断ははなから期待できませんでした。

経団連は炭素税に消極的

 その代償は小さくありません。炭素税の先送りはエネルギー構造の改革を先送りするだけでなく、日本全体でエネルギーの安全保障を議論するチャンスも先送りするのですから。

 炭素税は、地球温暖化を招くCO2の排出量や化石燃料の使用量などに応じて一定の比率で負担を求める税制です。税制の手法はさまざまですが、主に温暖化ガスを排出する石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を使用する企業などが対象。炭素税で課税された負担分を化石燃料、化石燃料を利用して生産した製品などに転嫁されるため、価格引き上げに繋がる可能性が大きく、結果としてCO2を排出する化石燃料や製品の需要を抑えることになります。

欧米では導入相次ぐ

 欧州ではフィンランド、スウェーデン、デンマーク、ポルトガルなど、北米ではカナダや米国の一部の州などで実施されています。ただ、炭素税を導入しているといっても、国のエネルギー事情から課税方法や実施状況で違いがあります。欧州の多くの国はエネルギー資源の大半を輸入に頼らざるを得ないのに対し、米国やカナダは石油資源などに恵まれています。フランスなどは原子力発電をエネルギー政策の中心に据えている国もあります。

 炭素税に限らず、税制はその国の事情に合わせて設計されるものです。例えば、日本の消費税に相当する税制を他国と見比べると、わかるはずです。炭素税は単純にいえば石油やガスなどエネルギーに課税されるわけですから、消費税のインパクトを思い出すだけで、企業経営や日常生活への衝撃は大きさが想像できます。

素税導入ありきではなく、まずは本格的な議論を

 だからといって、炭素税の議論を脇に置いて、見送る決断は納得できません。エジプトでCOP27が開催した直後ですが、どの国であっても地球温暖化対策を念頭に国のエネルギー政策を改革する道のりを避けて通ることはできません。まして日本は地球温暖化対策を推進し、主導することを表明、自任している国です。

 ガソリン価格や電気・ガス代の高騰を抑える補助金政策の陰で、本来ならエネルギー政策の根幹となる炭素税の議論が先送りされるツケは政府や与党が想像している以上に大きな負担となって企業や国民に回ってくるはずです。世界がかつてない厳しいエネルギー問題を抱えている今こそ、日本でも冷静な議論が展開できるチャンスを見逃すのですから。

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