滋賀県の針江地区は今も生活の中心に湧水
琵琶湖の西岸に位置する滋賀県高島市の針江地域を訪れたことがあります。鈴江地域の住民のみなさんは、比良山系からの伏流水を「生水(しょうず)」と名付け、炊事や洗濯、もちろん飲み水など生活のあらゆる場面で使われ、水を利用する場所を「川端(かばた)」と呼ばれています。洗い場には魚が泳ぎ、鍋についたご飯の残りなどを餌として食べ、人間の生活と自然の生き物が一体となったエコシステムには感動しました。NHKのテレビ番組で紹介されてこともあって、観光を兼ねて訪れる人も多く、川端を見学しながら鈴江地域ならでは環境保全を説明する受け入れ態勢も整っています。
日本は 日本は豊富な水資源に恵まれているせいか、「身近な存在である空気と水はただ」といった安全神話が定着しています。でも、そんな地域は世界では数少ないのが現実。水に関する日本の貴重な経験を世界へもっと発信して良いのではないでしょうか。
G7では簡潔なコミュニケ
G7の気候変動・エネルギー・環境大臣会合でも、「水」はあまり注目を浴びなかったようです。公表したコミュニケの中で11番目に登場しますが、他のテーマに比べて簡潔にまとめられています。以下に環境省が仮訳として公表している水の項目を抜き出して引用しました。
11. 水:国連水会議の成功を歓迎するとともに、関連する場合には、持続可能で気候変動に強い水資源 の利用と再利用、災害リスクの軽減、水関連生態系とその多様なサービスの保全と回復、汚染防止、 食料安全保障と栄養、水、衛生と全ての人の安全な水へのアクセスに寄与する国境を越えた協力を 含め、我々はあらゆるレベルにおける、淡水資源の統合的、セクター横断的、利害関係者参加型か つ完全に透明な管理及びガバナンスに向けて取り組むことにコミットする。我々は、河川流域、帯 水層、湖沼を含む水関連生態系の保全、保護及び回復の重要性並びに適応への取組に水関連の視点 を統合する必要性を強調する。
最後の文章で「我々は、河川流域、帯 水層、湖沼を含む水関連生態系の保全、保護及び回復の重要性並びに適応への取組に水関連の視点 を統合する必要性を強調する」(環境省の仮訳)。指摘する通り、地球上の生命、環境保全などを考え、改善するうえで、「水」を切り口に監視・管理を考え、実践することがとても重要になっています。
ところが、環境問題はどうしても地球温暖化を招くCO2などの排出、汚染、化石燃料の開発などを切り口に議論されがちで、「水」は常に脇役か端役に回されてしまいます。
日本には水で世界をリードできる技術と経験
地球温暖化に伴う気候変動は、これまで経験したことがない台風や大雨、逆に干魃などが世界各地で発生し、直撃された地域のみならず、世界の農作物貿易、感染症のまん延、衛生管理など予想以上に広範囲な被害となっています。砂漠の緑地化、汚染水の浄化など水をキーワードにした地域支援に際限はありません。
日本は上下水道による水資源の管理、汚染水の浄化など水に関する技術と経験は世界でもトップクラスです。世界的なプラント大手の日揮はじめ、多くの日本企業は世界各地で海水の真水化、汚染水の浄化、上下水道の整備などで活躍しています。東京都など自治体が整備で培った水系管理システムも高く評価されています。
世界に貢献する好機
一方で、日本は地球温暖化に関する取り組みは世界でも出遅れています。CO2の排出削減、太陽光など再生可能エネルギーの活用、電気自動車の普及などで世界を追いかける立場です。水に関しては世界でも稀な経験と技術を持つ日本です。世界をリードする意識で先頭を切って欲しいです。