ジャニーズ事務所、ビッグモーターなど不祥事企業を見ていると、「第三者委員会」と呼ばれる組織が煩雑に登場します。例えばジャニーズ事務所は創業者の性加害を解明する第三者委員会「再発防止特別チーム」が被害の実態を公表した後、次は被害者に対して補償を決定する「被害者救済委員会」を設け、補償金額を判断すると表明しました。委員会は元裁判官の経歴を持つ弁護士3人で構成され、被害者からの申告内容や資料を検討して補償金額を判断します。タレントの代わりに第三者委員会が表舞台に立ち、その発言は誰もが信頼に値する存在のようです。第三者委員会と書いた「のぼり」を振りかざせば、何でもできそうです。果たして、そうでしょうか。
第三者委員会は金科玉条の存在
自動車保険の不正請求問題で経営危機を迎えているビッグモーターは「第三社委員会」がずらりと並びます。ビッグモーター自らは不正を公表し、社長も辞任しましたが、その後も新たな不正が絶たないため、第三者委員会の手で修理工場で繰り返された不正事案を全件調査することを明らかにしています。そして、そのビッグモーターの不正を知りながら、取引関係を再開した損害保険ジャパンの親会社であるSOMPOホールディングスも、修理工場を舞台にした保険金の請求、支払いなどの取引実態を解明する目的で第三者が参加する「社外調査委員会」を立ち上げました。
不正事案が発生すると、トコロテンを押し出したように「第三者委員会」の列が生まれます。構成メンバーは弁護士などがほとんど。ジャニーズ事務所の場合は、元裁判官。SOMPOは「利害関係を一切有しない社外弁護士」と強調します。確かに法律の専門家は社会規範に詳しいので、不祥事や不正事案を解明する能力は高いと思います。しかし、それぞれ専門分野が分かれているうえ、多様な視点で解明され、全容が判明するかどうかは別の話です。医者なら何でも治療して寛解できるわけではありませんから。しかも、なぜか人材選任は不正と目されている当事者が行なっています。ありきたりですが、適材適所の人材なのか、その選任の過程も傍目からは不明です。
人材の選任は不正の当事者で良いのか
不正対象になっている当事者が自らの不正を明らかにする人材を選任する。何か「ボタンのかけ違い」を感じませんか。適切な人材を選べる立場は、やはり不正対象の当事者ではないはず。十分に反省し改心しているのだから、今度は大丈夫というわけにはいきません。社内の思惑などでウヤムヤにならないように、第三者委員会が乱発するなら公な決定の仕組みが必要にあるのかもしれません。
ジャニーズが性被害を解明した第三者委員会は当初、どこまで実態を明らかにできるのか危ぶまれていました。元検事総長の林眞琴氏が中心になって3か月間で41人から聞き取り、8月末の記者会見で創業者のジャニー喜多川氏を性加害者と認定しました。事務所社長の辞任要求などかなり踏み込んだ内容になったのは、被害者の皆さんの積極的な発言と共に、事実関係があまりにも酷く、中途半端な結論を出したら委員会のメンバー自身の信頼を失うと判断したこともあるのではありませんか。第三者委員会が機能するためには、実は調査や解明を徹底的にできる環境作りが最も大事だということがわかります。
情報公開、内部告発などで支援する環境を
SOMPOの場合はどうでしょうか。あれだけの大企業です。ビッグモーターの取引に従事した社員はかなりの人数になります。実態解明を本気でやろうするなら、社内の自由な発言を認めれば止めどもなく不正に関連したエピソードが出てくるのではないか。SOMPOが整備している企業統治、いわば内部統制が正常に機能すれば、内部告発制度などを通じてその実相は明らかになるのは確実です。
残念ながら、企業の不祥事・不正案件は今後も、出てくるのでしょう。第三者委員会と呼ばれる外部組織による解明も増えます。検事総長、裁判官、弁護士など強面の元職経験者が構成メンバーとして参加するはずですが、彼らの能力や経験に期待するのは違うと思います。委員会が正常に機能する環境作りはとは何かを考え、支援することがとても重要です。まずはたくさんの情報公開、内部告発、そして論議の高まりです。隠蔽を許さない環境を支える大きな柱です。