CMの認識を新たにした”事件”でした。暗号資産の取引所大手の米FTXトレーディングが2022年11月、経営破綻しましたが、その余波がなんと大谷翔平や大坂なおみにまで及んでいます。2人は他の有名プロ選手とともにFTXの広告宣伝などに関わったため、宣伝した責任があるとして損害賠償を求める提訴に巻き込まれたのです。
FTXの破綻が大谷翔平と大坂なおみに余波
ビットコインなどで知られる人気の暗号資産だけに、FTXの負債総額は7兆円規模に膨れ上がるかもしれないそうです。思わず「とばっちり」という表現が浮かびましたが、CM出演などを受ける際、そのリスクや諸事情を考える時代になった証なのかもしれません。
その流れでなぜか思い浮かんだのが「三井のすずちゃん」。三井不動産は再開発プロジェクトの成功事例として「東京ミッドタウン」「MIYASHITA PARK」を取り上げ、若者に高い人気がある広瀬すずさんを主役にしたCMを放送しています。広瀬すずさんは「ここも三井不動産が手掛けているの」と話し、東京・渋谷の宮下公園が公園・商業施設・ホテルが一体となった複合施設「MIYASHITA PARK」を生まれ変わったことをアピールします。
あの宮下公園が一新
冒頭の写真をご覧ください。学生時代、東京・渋谷は入り浸って朝まで飲み明かしていただけに、宮下公園の様変わりようにびっくり。ホームレスさんが多数住み、時間を問わず個性的なキャラを見かけましたから、真夜中に宮下公園を歩くのはちょっと勇気が必要でした。しかも渋谷の再開発は東急グループがすべて仕切っていると思っていましたから、三井不動産が手掛けたと知り、二度びっくり。”あの宮下公園”がきれいになって若い女性でも気軽に立ち寄れるなら、素晴らしい再開発です。
神宮外苑前もCMに登場する?
愚問が浮かんでしまいました。三井のすずちゃんが明治神宮外苑前のいちょう並木を歩く日が訪れるのだろうか。神宮外苑前の再開発は東京都のゴーサインを受けて、三井不動産、伊藤忠商事、明治神宮、日本ラグビー振興センターの4者が手掛けます。いちょう並木など周辺の木々が伐採され、ラグビー場や野球場の再配置で慣れ親しんできた風景が大きく変わりそうです。
正直言って、あの宮下公園が再開発されて、大きくイメージを一新するのとは大違いです。神宮外苑前は1926年(大正15年)、日本で初めて風致地区に指定されています。風致地区とは都市の良好な自然的景観を維持するため、指定地区での建築などは許可が必要。明治神宮外苑は風致地区の規制が一番厳しい「A地区」。建物の高さは15メートルに制限されていました。東京都は日本で初めて指定された風致地区の規制を緩和して高層ビルなどを含む再開発を認可したわけですから、その成果に大いに自信をもっているわけです。
しかし、失礼ですが宮下公園の再開発とは、質も規模も比較にはなりません。すでに、その景観と木々を守るため、多くの論議を呼んでいます。宮下公園が「MIYASHITA PARK 」に一新したように、みんなが大歓迎する再開発の成功例となると良いのですが・・・。
再開発が最終的に完成するのは2036年。広瀬すずさんが三井不動産のメインキャラクターを務めているかどうかわかりませんが、三井不動産が自らの再開発の成功例としてCMの舞台に採用するのでしょうか。誰が「ここも手掛けたのよ」と紹介するでしょうか。イメージ低下になるのからといって断る人はいないはずです。テレビCMで「素晴らしいでしょう」と胸を張って颯爽と歩く街の風景がどう映えるのか。まだ想像はできませんが・・・。