Eco*nomy

西武鉄道 再エネで全路線を運行 終着駅は地産地消型のエネライフでカーボンニュートラル

 カーボンニュートラル、あるいはカーボンゼロ。実際の生活を考えたら、目標として掲げても、とても達成に自信が持てません。テレビ番組によく出てくる「自給自足の生活」を真似ても、いつまで継続できるか。ただ、自分の活動を支えるエネルギーは極力、カーボンゼロに近づけたい。それは個人にとどまらず企業や政府なども同じ思いなはずです。

 非化石証書付きもありますが

 そんな難問を実践しようと挑んだのが西武鉄道。2024年1月1日から運行する全12路線で使うすべての電力を実質的に再生可能エネルギー由来に切り替えます。計算上は実質カーボンゼロ。電車の走行だけでなく、駅、踏切などの運行関係分も含みます。CO2が実質ゼロとなります。一般家庭の年間CO2排出量にすると約57000世帯分に相当します。

 2021年4月から一部の路線で太陽光発電で生み出した電力を使っています。2024年からは埼玉県と東京都で運行する残る路線でも太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した際に発行される「非化石証書」付きの電力を購入することにしました。この証書で購入した分はCO2の排出量が実質ゼロと換算されます。CO2の排出量は年間で約15万7000トン削減できるそうです。

狙いは自動車から鉄道へ

 西武の狙いは自社のCO2排出努力を訴えるとともに、鉄道の利用を呼びかけることにありそうです。日常生活でみると、CO2の排出量はまず自宅などで消費する家電製品がトップを占め、次いでマイカーやタクシーなど自動車の利用が続きます。カーボンニュートラルを常に意識すれば、いつもならマイカーなど自動車を使う目的地でも鉄道に切り替えることが増えるかもしれません。西武鉄道が「秩父へ行こう」とキャンペーンを展開しても、マイカーなどで観光されてしまう場合も多い。観光に加えカーボンニュートラルを意識してもらい交通手段の選択を切り替えてもらえれば、西武鉄道の利用が増える。こんな構図でしょうか。

 ビジネスライクといえばそうですが、自分が毎日消費しているエネルギーをどう効率的に選び、結果的にカーボンニュートラルに直結する発想が広がるなら、結果オーライかなと考えます。

 陳腐な例えですが、小さな節約が積み重なれば山となるように、西武鉄道の発想で企業活動がCO2の削減を自社の営業活動に取り込むことで個人、企業など幅広い場面で実践されれば、効果は文字通りヤマとなります。

日常生活でゼロの意識が高まるきっかけに

 リサイクルといえばゴミ廃棄のことと思われがちですが、エネルギーでも同じ考え方が広まってほしいです。言い換えればエネルギーの地産地消です。自身が利用するエネルギーは自身で生産し、消費する。

 西武鉄道は非化石証書付きのエネルギーを利用していますが、正真正銘の再生可能エネルギーですべてを賄えばパーフェクトです。地産地消型のエネルギーの企業が活動が少しでも広がり、それが企業活動を利用する、あるいは選別する視点として定着すればカーボンニュートラルはゆっくりですが、後戻りしない潮流となって、いつかは当たり前のことになります。

 日本は欧米などに比べてカーボンニュートラルが意識されていないといわれますが、エネルギーの地産地消型を目指す生活が意識されるだけでかなりの変化が始まります。

最近の記事
Eco*Ten
  1. ESG・SDGsとマネー③ ESGの冠を取り下げようの声も 投資の透明性に不満

  2. 景観で国立市のマンションが解体するなら、明治神宮外苑も・・と誰もが

  3. 日揮Eco*Ten7・2点(下)一瞬の奢りが盤石の牙城を砂上の楼閣に 強さを守る自身への厳しい視線

  4. 超吸水性ポリマーが農業を救う 大学発ベンチャーが地球環境問題の壁をぶち破る

  5. ESG投資は「ファクトフルネス」に耐えられるのか アルケゴスの幻影がちらつく

  6. 三菱商事、ブラックロック、相次ぐ脱炭素ファンド・投資商品、注目度は抜群 でも目利きは大事

  7. マイクロソフト 核融合発電の米スタートアップから電力購入 夢が現実に、それとも夢幻

  8. 後発薬品だからって不正もゾロゾロは許されない 沢井製薬、日医工、小林化工

  9. 欧州中央銀行 社債を気候変動スコアで数値化 環境経営の格付けを後押し

  10. 国のジェネリック普及 効能は先発薬と同じでも、供給力と信頼はまだ後発のまま

  1. Eco*ユニコーン創生 株式上場益の2倍相当を無利子で10年融資、脱炭素のブレイクスルーへ

  2. スズキEco*Ten(上)伸び代はいっぱいですが、実行と成果はこれから

  3. ESGと経営戦略①マクセル が全固体電池の先駆に エネルギーのスマホ化を加速

  4. JFE 高炉から電炉へ 脱炭素の覚悟 過去の栄光と葛藤の末に Eco*Ten 6・5点

  5. 気候変動ランキング① CCPI 日本は59ケ国+EUのうち50位 政策の具体性と実現に低い評価

  6. 政府、原発推進へ大転換 及び腰から本腰へ 本気度をEco*Ten 10点満点の3・5点

  7. ダボス会議 悲喜劇の舞台に形骸化、そろそろ賞味期限切れが迫っている

  8. 日揮 スシローなどとSAF生産、ESG・SDGsが背中を押した驚きの提携

  9. 経産省が国交省を行政指導する日は近い?! 企業の人権侵害の手引き公表

  10. キーエンス Eco*Ten は10点満点の6・5点 環境は身の丈に合わせて努力

TOP