東京・神宮外苑の再開発問題に出口が見えません。3月下旬、神宮第二球場の解体工事が始まり、再開発事業が本格着工しましたが、樹木伐採などが伴う工事内容に対する大きな批判が収まりません。
都知事は「都民の共感を得るように」と2度目の要請
東京都の小池百合子知事は4月7日の記者会見で「都民の理解や共感を得られていない」として三井不動産など事業者に対し具体的な対策を早急に示すよう要請したことを明らかした後、「どこかで間違った情報も伝わって、それがあたかも真実のように伝わっているのはよろしくない」と述べ、「イチョウ並木を切ると。樹木の伐採というと、そちらのほうにみなさんのイメージが勝手にいっていることがある」と続けました。
都知事は仲裁人?
ちょっと驚きます。東京都知事は再開発事業者と批判する都民の間に立つ仲裁人のような発言です。事業主体は明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事、三井不動産の4者で構成しています。神宮外苑の再開発地区は地権者の合意を得て進んでおり、再開発が完成した後に恩恵を被るのは事業主体。東京都が直接関与しているわけではありません。
しかし、大事なポイントを見落としてはいけません。東京都は神宮外苑地区の再開発について推進する立場にあることです。東京都都市整備局のホームページでは以下のように説明しています。
「まちづくり上の課題を抱えている」と明記
神宮外苑地区は国民や競技者がスポーツに親しむ一大拠点であり、聖徳記念絵画館、いちょう並木を中心として緑豊かな風格ある都市景観が形成されています。一方で、スポーツ施設等の老朽化や、競技環境・観戦環境の陳腐化、気軽にスポーツ等を楽しんだり、人々が自由に立ち入って緑を楽しめるオープンな空間が少ないこと、歩行者空間の不足による混雑や連続的なバリアフリー経路の不足などのまちづくり上の課題を抱えています。
今回のまちづくりでは、これらの課題解決を図りつつ、緑豊かな風格と活力を備えた世界に誇れるスポーツの拠点を形成するため、都が定めた「東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針」等を踏まえ、4事業者が連携して取り組むものです。
東京都は現状の課題を解決するため、日本で初めて景観を守る風致地区として指定された神宮外苑前の再開発事業を認めているのです。仲裁する立場ではありません。国立競技場やラグビー場など日本でトップクラスのスポーツ施設のみならず、東京都のシンボルとして注目を集める再開発をめざしているのですから。
1年前に三井不動産の社長に会い、要請したけれど
実は東京都は1年前の5月、事業主体をまとめる三井不動産の菰田正信社長と会い、外苑が献金や献木によって創建された歴史を踏まえ、計画に多くの都民が関われるよう要望しています。4月7日の記者会見では直近に再度要請しており、1年過ぎても再開発に対する批判が収まらないの事業主体の説明不足にあると指摘しています。
東京都の予算規模はスウェーデンを上回る
しかし、東京都知事の権限は、絶大です。選挙を通じて選ばれ、政策は都議会での議論など民主主義の鉄則に従っているのは当然ですが、都民から直接選ばれる首長です。総選挙、国会を経て選ばれる首相と違い、大統領並みの信任を背に政策を実行できるのです。しかも、東京都の予算規模は15兆円を超え、海外と比較するとスウェーデンを上回る規模。国と違って軍事力を保有しませんから、許認可権を加えて予算を通じて与える影響力はとても大きいのです。
三井不動産や伊藤忠は都知事の意向を聞き流す?
その東京都知事が1年前に要請したことが2023年4月現在になっても、事業主体が実行しない理由とはなぜなのでしょうか。都知事の本気度はどの程度なのか。三井不動産や伊藤忠商事は、ビジネスに長けた高収益会社です。都知事の意向を聞き流すデメリットがどのくらいあるのかは十分に承知しています。当然、都知事の本気度も理解しています、それが1年後も事態が変わらない。都知事の要請はポーズと受け止めているからなのでしょうか。
都知事の本気度は?
不思議と疑問が?????といちょう並木のように並んでしましいそうです。