第3回はプラスチック汚染。ペットボトルや簡易トレーなど日常生活で欠かせないプラスチック製品が対象になりますが、日本はゴミの分別が進んでいるので、プラスチック汚染は他国に比べて対応が早いと考えていました。全くの勘違いでした。
「日本はリサイクル先進国」は全くの勘違い
日本が再利用しているプラスチック製品は事実上、わずか10%程度。先進国でリサイクル率が低い米国が9%だそうですから、そう差はありません。欧州の30%と比べたら、もう背中が見えない距離感です。日本が直面するプラスチック汚染の課題は再び触れますが、実は世界の中で出遅れていることを覚えておいて下さい。
G7の気候・エネルギー・環境大臣会合では以下のコミュニケが公表されました。(原文は英語、日本語訳は環境相が公表した仮訳を引用しました)
プラスチック汚染に関するG7目標:我々は、2040 年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにす る野心を持って、プラスチック汚染を終わらせることにコミットしている。これを念頭に、我々は、 包括的なライフサイクル・アプローチ、プラスチックの持続可能な消費及び生産の推進、経済にお けるプラスチック循環の増加及び環境上適正な廃棄物管理を踏まえ、我々の行動を継続し、発展さ せることを決意する。これらの行動は、適切な形で、可能な場合のフェーズアウト及び生産・消費 の削減等の措置を通じた使い捨てプラスチック、リサイクル不可能なプラスチック及び有害な添加 物を含むプラスチックへの対応、プラスチック汚染由来のコストの内部化のためのツールの適用並 びにマイクロプラスチックの排出源や流出経路及び影響への対策を含む。こうした取組を通じ、 我々はパートナーやステークホルダーと強固に関与し、彼らを参加させ続ける。こうした取組につ いて、G7オーシャンディール、大阪ブルー・オーシャン・ビジョン、G20 海洋プラスチックごみ に関する実施枠組み、海洋プラスチック憲章、G20 海洋ごみ対策行動計画、G7海洋ごみ対策行動 計画を踏まえつつ、他の国々にも同様の取組を促し、支援していく。陸域由来及び遺棄・放棄され た漁具(ALDFG)を含む海域由来の不適切な予防と管理等が主要な汚染要因であることを認識し、国際海事機関(IMO)による漁具のマーキング及び ALDFG の報告に関する交渉を引き続き支援する。 我々は、報告及びモニタリングを含む、プラスチック汚染に関する科学的・技術的な知識を強化し、 プラスチック汚染を終わらせることに貢献するプラスチックのライフサイクル全体にわたる既存 及び革新的な技術やアプローチを促進する。関連する地域及び国際的な条約や文書間での協力、調 整、補完性の重要性を再確認し、地域海洋協定および行動計画の下で海洋におけるプラスチック汚 染を防止し、削減する現行の取組を強調する。主要な経済国やステークホルダーと、既存のフォーラムやイニシアティブを通じてベストプラクティスや教訓を共有することで緊密に連携する。
コミュニケは警鐘を鳴らし続ける
とても長い引用文になってしまい、申し訳ありません。要約すると、次のようなイメージでしょうか。前半部分は、使い捨て、海洋投棄など従来から指摘されているプラスチック汚染の具体例を紹介しながらも実効性が乏しく、後半部分は国際的な取り決めを確認しつつ、本気で連携しなければ汚染は解決できないという警鐘を鳴らしています。
裏返せば、これまでも課題を指摘してきたが、なかなか前進せずゴールまでの道のりは予想以上に遠いという嘆き節に聞こえてきます。
地球全体に視野を広げると、1950年以降に生産されたプラスチックは83億トンを上回り、このうち75%に相当する63億トンが廃棄されています。プラスチック製品はその特性から放っておいても消えて無くなることはありません。廃棄されたゴミは減ることはなく、増えるばかり。地球の汚染度はどんどん高まるばかり。こんな構図です。
日本のリサイクル率はわずか10%
日本のプラスチック製品の現状はどうでしょうか。年間1000万トン弱の廃棄量が生まれ、世界全体の2%程度を占めるそうです。2%という数字の重さがわかりにくいので、ゴミ捨てランキングで見ると、第5位だそうです。ゴミの量は国や人口の規模に左右されるため、国連が集計した1人あたりの廃棄量でみると、米国に次いで世界第2位に多い国に数えられます。あれだけ毎週、ペットボトルやリサイクルマークなどを確認して仕分けしているにもかかわらず、ごみ廃棄量で不名誉な記録を残している訳です。残念です。
しかも、廃棄されたプラスチック製品の70%近くが焼却されています。リサイクルするために各家庭できめ細かく仕分けているのに、と思いませんか。リサイクルに回るのは25%程度、8%程度が埋め立てにそれぞれ回るそうです。
残念なことにリサイクルという考え方にもカラクリがありました。70%近くが焼却されるプラスチック製品のうち50%以上は燃料として使われ、その燃焼から発生する熱は暖房などに利用されています。日本は、この熱を回収する工程をサーマルリサイクルと呼び、再利用する25%と合計して日本のリサイクル率は80%を超えると称していました。しかし、国際基準で見るとこうした熱の回収は認められていません。
しかも、情けないことに再利用している25%のうち7割程度は中国などアジアへ輸出してリサイクルされていました。その分を差し引くと、日本のプラスチック製品のリサイクル率は米国とほぼ同じ10%程度に落ち込む計算です。
レジ袋の有料化に疑問視の声も
日本政府は2020年7月にスーパーなどのレジ袋の有料化を定め、プラスチックの有効利用と節減に努める姿勢を国民に求めました。ただ、その実効性は乏しいようです。もともとレジ袋が占める比率がわずかだったこともありますが、有料化しても他の場所でレジ袋の代わりとなるプラスチック製品を購入し、結局はそのままゴミとして捨てられるなどの弊害を招き、効果について疑問視する声が多数あります。
日本や欧米がプラスチックごみのリサイクル処理先として輸出していた中国などアジア各国も、環境汚染などを考慮して輸入を停止する動きがすでに広がっており、欧米ではプラスチックごみの節減を加速しています。日本政府のみならず、私たちも生活様式を改めて冷静に見直し、プラスチック製品をどう有効に使用するのか、あるいは使わずに済むのかを考えなければいけません。消費者が変われば、メーカーや流通業者は必ず変わります。
改めて仕切り直すきっかけに
G7環境相会議で公表されたコミュニケを読んでいると、日本はもちろん、なす術を見失いかねない世界各国の焦りを感じます。日本は改めてプラスチック製品の処理について根底から見直しし、仕切り直さなければいけません。