欧州中央銀行(ECB)が社債の保有リスクを評価するため、脱炭素の取り組みを数値化する「気候変動スコア」を発表しました。ECBは金融緩和策として国債、社債を購入しており、大量保有に伴う損失も懸念されています。保有する社債の損失リスクをより「見える化」するのが狙いです。これは同時に社債を発行する企業の環境経営の格付けにもつながります。企業に対し気候変動対策を掲げるだけでなく具体的な取り組みを求める動きが広がりそうです。
ECBの発表内容はこちら;https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.pr220919~fae53c59bd.en.html
気候変動スコアは3項目
ECBが公表した気候変動スコアは3項目です。第1項目は過去の温暖化ガスの排出量。同業種のライバル企業と比べて、温暖化ガスの排出量がどの程度の水準になるのかを数値化し、排出量の削減努力を評価します。第2項目は今後の温暖化ガスの排出削減目標。より野心的な排出削減努力する企業と比べて、当該企業の削減対策を評価するとともに、より一層の削減を求めます。第3項目は温暖化対策の経営情報の開示。情報開示の内容、努力などを精査し、より優れた開示努力が判明すれば気候変動スコアは向上します。
ECBは10月から気候変動スコアを参考に社債を買い入れます。社債の新規購入、買い増しが市場で広がれば、社債を発行する企業が脱炭素の取り組みで高い評価を得ていることにつながります。企業は有利な条件で社債発行できるほか、株価などでもメリットを受けるかもしれません。企業の脱炭素対策を後押しする形になり、ECBは社債購入という金融政策を通じて欧州企業の環境経営を促すことができます。
社債購入はスコアの評価で
ECBが気候変動スコアを公表した背景には、脱炭素など地球温暖化対策の取り組みが企業の収益と連関しているからだそうです。2022年7月に気候変動対策で高い収益を上げる社債を増やす方針を決めています。今回公表した気候スコアの試算については適宜見直す考えで、2023年は1~3月期の保有する社債の内容についても情報開示します。
環境経営を評価する具体的な数値が明確になれば、企業はそのスコアをベンチマークに経営計画を修正します。企業の地球温暖化対策は、エネルギーや素材、航空会社などCO2を大量に排出する産業で積極的な取り組み、発言、情報開示が広がっています。株主総会などでも、株主らからより踏み込んだ施策を求める声も高まっています。ただ、目標を掲げているとはいえ、その実効性や達成度の検証はこれからの段階です。
中央銀行が数値化で目に見える気候変動スコアを示す動きが日本でも始まることを期待しています。
コメント