電力会社の不祥事が続いています。2022年末、公正取引委員会は関西、中部、中国、九州の4電力に対し顧客獲得に関連したカルテルを結んだとして処分しました。カルテルの認定期間は2018年から2020年まで。課徴金は関電を除く3社で1000億円と過去最大。主導した関電は自らカルテルを申告したので、制度上の恩典で課徴金はなし。自らの不正を棚に上げて他の3電力は怒っていますが、公取委は悪質さは変わらないと指摘します。当然です。
カルテル、不正閲覧など不祥事が絶えない
電力自由化以降に新規参入した会社が得た顧客情報を不正に閲覧した事件も発生しました。関電の営業担当社員らが子会社のシステムを通じて電力小売りの新規参入事業者の顧客情報を見ていました。全面自由化された2016年4月から閲覧していたそうで、昨年4月以降だけで約1000人が40000件超も不正アクセスして、情報を得ていました。関電の森望社長は「公正な競争を揺るがすものと重く受け止めている。深くお詫びします」と謝罪していますが、関電トップが謝罪するのは何度目か。
関西、中部、中国、九州そして東京
東京電力も仲間入りします。電力を販売する子会社の社員らが経済産業省の管理する再生可能エネルギーの発電事業者に関するシステムの情報を不正に閲覧していました。閲覧件数は4000件超。東電はこれまでも柏崎刈羽原発で他人のIDカードを使い回しして不正に出入りしていたことが発覚。原発の安全運転・管理も含めて会社全体で信頼を失っています。
枚挙にいとまがありません。電力会社の経営、組織として病巣が深く染み込んだとしかいえないでしょう。電力会社は社会生活、経済の中枢を支える役割を果たし、事業規模、投資などで地域で最も大きな企業として君臨してきました。地域ごとにある経済連合会で電力トップ経営者が会長を務めるのが習わしのようになっている事実からも、その実力の凄さがわかると思います。
その電力会社は原発休止などで経営収益で綱渡りを強いられています。だからこそ、販売カルテル、新電力の顧客情報を盗み見する不正を犯すのでしょうが、正当化できる理由ではありません。
地域経済のトップに君臨した奢りを捨てきれない
その奢りが自らを律する組織運営を難しくしています。今の言葉に例えればESGやSDGsを実践できないのです。企業は社会的責任を自覚しながら、収益を上げる組織です。完全無欠の組織はありえませんから、不祥事が発生するのも避けられません。自ら過ちを認め、次に向けて再発を防止するのが会社組織であり、そう努力するのが経営者です。
思い出してください。関電では福井県高浜町の元助役が原発担当者や経営者に対して資金などを供与した問題もありました。結局、その責務はうやむやになった印象です。
厳しすぎると思われますか。しかし、電力会社の経営をチェックするのは当然です。日本のエネルギー政策の要である原発を運転する会社ですから。ロシアによるウクライナ侵攻で世界のエネルギー需給は激変。気候変動への対応もあって原子力発電への期待は高まっています。資源小国の日本にとって原発は不可欠。休止している原発の再稼働はもちろん、新増設も再び開始する政策に大転換したばかりです。
原発の安全運転を任せられるのか
原発の安全性を再確認して再稼働するのは賛成です。しかし、福島第一原発事故で明らかになったのは、安全性に対する電力会社の宿命に疎い経営陣の姿勢です。経営者がしっかりと安全に対する考えを持っていなければ、「安全」が「危険」に差し替わります。不正を許さない企業体質ならまだしも、不正を見逃すのが当たり前かのような組織に原発を任すことができるでしょうか。今回、カルテルや不正閲覧で主役を務める関電の収益は原発の稼働率に左右されるというのに。自ら原発を遠ざけ、危うくしているとしか思えません。
コメント