回転寿司チェーンのくら寿司が「お寿司で学ぶSDGs」をテーマに学校を訪れて出張授業しています。食品産業新聞の9月6日付記事によると、回転寿司チェーンでは初めての試みで2022年5月から始め、すでに15校で実施しています。ある小学校の授業風景を伝える同新聞の記事を読んで初めて知りました。
回転寿司チェーンで初めての試み
記事で紹介された出張授業では、食品ロスとあまり食べる機会が少ない魚の2つをテーマに設定していました。「シイラ」の模型を利用して普段は食べない魚について説明したほか、「お寿司屋さん体験ゲーム」を通じて食品ロスについて生徒たちと意見交換しながら考えたそうです。
食品産業新聞の記事によると、14,500種類以上の魚のうち、私たちが口にするのは約500種だそうです。くら寿司はハワイでは“マヒマヒ”と呼ばれ高級魚として扱われている「シイラ」、イメージがよくありませんが味は真鯛並みの「ボラ」などを食材として活用しています。ちなみに山下達郎さんのCDでDJを演じる小林克哉さんが「マヒマヒ・ライダー」と連呼しているのが耳に残る世代ですから、シイラが知られていない魚種に選ばれているのはかなり意外です。
体験ゲームで食品ロスを知る
授業でユニークなのは「お寿司屋さん体験ゲーム」。店舗で使っている回転レーンと同じ機材を使い、お寿司は食品サンプルを利用しています。どのネタがどのくらい注文が入るかを予想して寿司を握る担当、皿を選んで食べる担当に分かれて、食べられた寿司皿の枚数を競いました。ゲーム終了後は、余ったサンプルの寿司を参考にしながら食べ残しによる無駄、つまり食品ロスについて実感しました。くら寿司は店舗ごとに適切な量・ネタを提供する「利用客の空腹度を数値化」し、食品ロス削減につなげていると説明したそうです。
回転寿司チェーンが魚、そして食べることに関して出張授業する試みはとても素晴らしいです。くら寿司はSDGsが掲げるGOAL17項目のうち12番目の「つくる責任つかう責任」、14番目の「海の豊かさを守ろう」、17番目の「パートナーシップで目標を達成しよう」に沿った授業内容とホームページで説明しています。
回転すしといえばテレビ番組などでお皿を何枚食べたと食べる量にばかり注目されがちですが、メニューの幅が広がり、今や洋食、和食なんでもOKのレストランに様変わりしているチェーン店も目立ちます。40年以上も前に回転寿司チェーンやすし皿を回転する機械などを取材してきた人間からみると、ほんと時代が変わったという感慨しか浮かびません。
世界でサカナの奪い合いが広がり、水産資源の枯渇も
一方で、チェーン同士による激しい競争が魚の仕入れにも及び、水産資源の維持に影響を与え始めています。回転寿司の人気メニューは「サーモン」「マグロ」が上位を占め、人気魚種の偏りは漁獲量の拡大を招きます。かつて日本が主役だった漁業も世界中でサカナを食べる習慣が広がったため、世界の海で魚は奪い合いです。養殖事業が各国で盛んになり始めているとはいえ、大量の餌や薬の散布で食に対する安全・安心を懸念する声が高まっています。
身近なSDGs体験の広がりを期待します
回転寿司は食生活にとても身近な存在です。その回転寿司チェーンが子供たちに海洋資源の保全、食品ロスを抑える努力を伝えることは、親ら家族にも伝わり、自分たちの命と健康を守る食をどう考えるか、いわゆるSDGsの定着に行き着きます。子供たちを主役にした料理教室も人気上昇中です。いろいろな切り口で食に関するSDGsの広がりを期待したいです。
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